The Floating Home

ゆらゆらする家

 2024 「ふたつのトワイライト」柴田早理+上條信志 Selection by 三田村光土里

2024 Two shades of Twilight   
 Sari Shibata and Shinji Kamijo selection by Midori Mitamura 

場所:アートセンターオンゴーイング

Art Center Ongoing

『ふたつのトワイライト』に寄せて

 オンゴーイングの小川さんから若いアーティストの展示をやらないかと聞かれて、即座に思い浮かんだのが柴田早理と上條信志の2人展でした。二人は私が講座を受けもつアートスクールの修了生でもありますが、なぜこの二人だったのか特に理由はありませんでした。でも、この「理由がない」というのが重要で、そういうときの勘は大体正しいのです。

 二人は絶えず進化し続けているので、つくったものはすぐに過去になり、いつまでもそこに留まってはくれません。なので私がキュレーションと称して、過去作から読み解いた幻影に縛り付けないよう、彼らが生み出すままに委ねることにしました。そして、ある日ふっと『ふたつのトワイライト』にタイトルが落ち着いた瞬間、全てが繋がって見えました。

 世界中を旅しながら貪欲に制作する柴田は、精霊信仰の祈りに制作を重ね合わせて「作ることによって救われ、人間の本能としての芸術の力を実感している」と、苦しい時期を振り返ります。山村部で生まれ育った彼女は、タイの山岳少数民族の家に故郷との不思議な類似性を見出します。故郷の因習的な「家」の価値観とは対照的な伴侶に出会い、家に縛られずに働くデジタル遊牧民となって、改めて家というものへの気づきを『ゆらゆらする家』という作品に映し出します。

 上條は、活動初期には自身のルーツに纏わる文化や社会への問題意識を映像やインスタレーションで演じて観せていましたが、最近はより視覚化の洗練に注力しながら「時間の観念や人の営みについて新たな視座から捉え直し、私たちのいる世界の、とめどない時間そのものを見つめなおしたい」と言います。人の外見に抱く「好み」を決定づけてしまう要因を問い直す『解体新書』と、祖母の日常から老いの孤独や内面に眼差しを向ける《Lost and Found》の2作を発表します。

 彼らの人生時計は、まだ眩しい午前中のはずなのに、タイトルの「トワイライト」は、どこか老生した死生観をちらつかせています。わかりにくい例えですが、その輝きは透明な集光板のエッジの光だとか、夕陽の逆光に浮かび上がって光る雲の輪郭のような、キラリとした明るさなのです。

 自分を通して世界を見ようとする彼らの内側では、時代の混濁から精製されて純化した結晶が、祈りと慈悲の光を灯して、隔たりや境界の無い世界へ私たちを導き諭してくれるかもしれません。 

三田村光土里

この作品は、山と水田に囲まれた私の故郷とタイの山岳少数民族との類似点から着想を得ました⛰️

この作品では、デジタル遊牧民としての現在の生活を反映し、「家」という概念の揺らぎや故郷、移住、都市と山岳地帯のコントラスト、祖先への祈りの風習、そしてそれらをつなぐ川や国境について考えながら制作しました。

物事の形はたえず変化していきます。仕事も生活も、自分で考え、作り出していく時代です。

時に、川や山などのどうしようもない地理的な壁や資本、そして障がいによって、人々は見えない壁に閉ざされてしまいます。

しかし、それでも私は、人々が見えない何かによって繋がることができると信じたいです。

In this work, reflecting my current life as a digital nomad, I created it while contemplating the fluidity of the concept of "home," my hometown, migration, the contrast between urban and mountainous areas, ancestral prayer customs, and the rivers and borders that connect them.

The forms of things are constantly changing. It's an era where we think for ourselves and create our own work and life.

Sometimes, due to insurmountable geographical barriers like rivers and mountains, capital, and disabilities, people are shut behind invisible walls.

However, even so, I want to believe that people can be connected by something invisible.

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©Sari Shibata